プロ野球と自己同一性

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みなさん、こんにちは。

前回はプロ野球ファンが他球団ファンのことをバカにする、煽ることの心理について見ていきました。
その中で「自己同一性」がありました。

今回はこの自己同一性について掘り下げて話をしていこうと思います。
それでは、今回もよろしくお願いします。

今回のサムネ画像も前回と同様、予土線を走るキハ54系です。こちらは黄色い塗装になっていて、トロッコ車両を連結するときもあります。

左にあるのがトロッコ車両

自己同一性とは

これは前回も見ましたが、再掲します。

自己同一性とは、心理学用語のアイデンティティを指し、「自分が何者であるか」という確固とした自己認識や、他者や社会から認められているという感覚です。
自己同一性は、「個人的アイデンティティ」と「社会的アイデンティティ」の2つがあります。前者は自分個人としての特性、性格、価値観などで、後者は自分が属する社会集団に基づく自我(例:性別、国籍、趣味、ファンであることなど)です。
プロ野球ファンとしての自己認識は、後者の社会的アイデンティティと深く関係します

社会的アイデンティティ理論

これは社会心理学者のヘンリー・タジフェル(Henri Tajfel)という人が提唱したもので、人は「自分が所属する集団(内集団)」と「それ以外の集団(外集団)」を区別し、内集団に対する誇り・一体感を通じて自己評価を高める、というものです。

プロ野球ファンで説明すると、

・内集団(in-group)
例:阪神ファン同士

・外集団(out-group)
例:巨人ファン、あるいは野球に興味のない人

です。そして、内集団バイアスとして、自分のチームやファン仲間を「優れている」と感じます。また、外集団差別化として、ライバル球団やファンを軽視したり、強い感情を向けたりします。そして、社会的比較として、「ウチの応援は一番熱い、ウチのファンは礼儀正しい」などの主張をします

その結果として、「○○ファンであること」が誇りや自己肯定感の源泉となる、チームの勝敗や活躍が自分自身の感情や自尊心に影響する、他球団ファンとの「対立」や「仲間意識」が自己同一性(アイデンティティ)を強化するなどにつながっていきます

ここまでの内容は難しいように思えますが、よく考えてみると実感があるのではないでしょうか?

プロ野球ファンにおける自己同一性

プロ野球ファンにおける「自己同一性(アイデンティティ)」の例には、以下のようなものがあります。これは、ファンが自分自身をどう認識し、どのように他者と区別するか、という観点で説明できます。

僕は関西にいるということで阪神ファンを例にこの後の説明をしていきますが、これは阪神だけでなくどの球団でも起きます。

特定の球団への帰属意識
例えば「自分は生まれも育ちも関西だから、阪神ファンであることが自分の一部だ」というものです。これはローカル球団ほど起きやすいものでが、地域とのつながりを通じて、球団への応援が自己のアイデンティティの一部になっています。

チームカラーや応援スタイルに誇りを持つ
例えば「阪神ファンとして、甲子園の応援文化や熱さは他にはない。自分の誇りだ」というものです。これは球団特有の文化に共感し、それを自分の性格や価値観の一部と同一視していると言えます。

「対立」や「他者」との区別
先ほど述べました「内と外」というもので、例えば「巨人だけは絶対に応援しない。それが自分の信念だ」というものです。こちらは他チームとの差別化が自己同一性の形成に影響しているもので、特にライバルチームとの関係性でアイデンティティが強化されます。

ファン歴の長さや知識への誇り
これは自己同一性とは関係ないように思えますが、このような側面もあります。
例えば「自分は○○(選手)のルーキー時代から応援してきた。にわかとは違う」というものです。長年のファンであること、あるいはマニアックな知識を持っていることが、自分を定義する要素になっています。

ユニフォームやグッズの着用
これもプロ野球のファンならたまにいます。例えば試合の日は必ずユニフォームを着るなどです。「それが自分のルーティン」と思っていて、グッズや服装を通じて自分がファンであることを日常的に表現し、そのことが自己認識に繋がっています。

SNSでの発信・コミュニティ参加
最近だとこれをよく目にします。例えば「ファンのコミュニティで毎日情報交換している。仲間との一体感が自分にとって大切」というもので、オンラインでの発言や交流を通じてファンとしての自己同一性を強化・共有しています。

人生観や価値観と結びつく応援
これもよくいますよね。次回見ていきますが、無理にポジティブな応援をする人はこのパターンです。
例えば「弱くても諦めずに戦う姿勢が、自分の生き方に重なる。だからこのチームが好きなんだ」というものです。
球団や選手の姿勢と、自分の人生観が一致し、精神的な支えや価値観の一部となっています。

このように、プロ野球ファンとしての自己同一性は、単なる「趣味」や「好きなこと」ではありません。以下のような心理的・社会的機能を果たします。

・所属意識と仲間との連帯感
・他者との違いによる自己認識
・継続的な自己像と人生の意味づけ
・感情的な支えや喜びの源泉
・自己価値の投影(チームの活躍=自分の誇り)

今回はプロ野球ファンにとっての自己同一性について見ていきました。
こうした自己同一性は、単に「ファンである」ことを超えて、「自分とは何か」「どんな人間か」という問いに深く関わっています
現代文の評論みたいですが、そのような評論文に出てきてもおかしくない内容です。

今回もありがとうございました。