みなさん、こんにちは。
今回もちょっと現代文の評論というか、哲学チックな内容となっております。
バカにする、煽るファンがいることや、ファンでいることが自己同一性を満たすことはわかりました。
しかし、これはプロ野球でもサッカーでもいいのですが、そもそもなぜ人はスポーツの球団(チーム)の「ファン」になりたがるのでしょうか?
そして、なぜファンであることにアイデンティティを感じるのでしょうか?
「なぜ人間は、わざわざ自分とは直接関係のないスポーツチームに熱中し、ファンになりたがるのか?」というのは、スポーツ社会学・心理学においても長年研究されてきたテーマになっています。
これは本能的な「生きる術」にも関係していてるようなので、今回はそんな要因について見ていきたいと思います。
それでは、今回もよろしくお願いします。
今回のサムネ画像は、ファンが多い快速マリンライナーの二階建て車両です。2階と平屋部分がグリーン車、1階が普通車指定席になっています。
人がファンになる理由
なぜ人はスポーツチームのファンになるのでしょうか。これには5つの主な理由があるとされています。
所属欲求を満たすため
企業経営理論で出てきたマズローの欲求階層説ですね。人間には「どこかに属したい」という根源的な欲求があります。
そして、応援するチームやファンコミュニティへの参加が、この欲求を満たします。つまり、チームを応援することで、「自分は○○ファンの一員だ」という所属感・連帯感を得ることができます。また、見知らぬ他人とも、「同じファン」というだけで自然に会話や共感が生まれます。
実際の例としては、「カープ女子」「トラキチ」「ジャイアンツ愛」など、チームを超えたコミュニティ形成がされています。
自己同一性のところで見た「個人的アイデンティティ」はこちらです。例えばスタジアムでユニフォームを着ると一体感が増し、自分を超えた集団の一部として振る舞うようになります。
ファンであることは個人のアイデンティティの中核になりうる重要な要素だと言えます。
自己同一性(アイデンティティ)の構築
「○○ファンである自分」という一貫した自己像を持つことで、人生に意味や方向性が生まれます。
自分が「何者であるか」を定義づける手段として、チームとの一体化が使われます。特に、地域性・家族・思い出などと結びついたチームは、人生の一部としてアイデンティティを形成します。
例えば「父親が阪神ファンだったから、自分もずっと阪神ファン」というのはよくありますね。また、「地元に球団があることが誇りだ。自分もその一部だと思っている」という人たちもいます。
そして、例えば「弱くても応援し続ける。自分もそうやって生きたい」など、その人の人生観と結びついています。
自己同一性のところで「社会的アイデンティティ理論」というのを見ましたね。自分が属するグループ(=チームのファン)を誇ることで、自己評価が高まるというものです。また、他のチームとの対抗意識が自分たちの一体感や存在意義をより強固にしています。
感情の起伏を安全に体験できるため
これは「感情的カタルシス」とも表現されているものです。
普通の人の人生では普段、怒り・歓喜・涙・悔しさなどを全力で出す場はほとんどありません。しかし、スポーツ観戦ではそれを安全・合法的に思いきり味わうことができます。
例えば「9回裏逆転サヨナラホームラン」というのは、日常では得られない高揚感があります。また「大差でボロ負け…」というのも、悲しさや悔しさを他人と共有できる場面です。
これは感情的つながりを味わえることでもあります。つまり、チームの勝敗や選手の活躍に一喜一憂することが、自分自身の感情体験と深く結びつきます。
そして、その経験の積み重ねにより「ファンであること」が感情的なアイデンティティになっていきます。
人生や価値観を投影できるため
良い言い方をすると「人生にとっての物語があるため」です。ファンによってはこの言い方で美談にしている人もいます。
スポーツチームには、選手の成長、挫折、復活、逆転劇など、ドラマの要素が詰まっています。そして、自己同一性によってファンはそこに自分の人生や信念を重ねることができるわけです。
例えばエースが怪我から復帰して活躍したシーンがあれば、「自分も頑張ろうと勇気をもらえる」となります。また、弱小チームが成長する姿を見て自分の境遇や努力と重ねる人もいます。
震災の後に「スポーツで勇気を」というセリフがよく出てくるのは、この心理があるからです。
報酬と一体感(勝利の疑似体験)
チームが勝つと、自己同一性から、ファンはまるで自分が勝利したかのように喜ぶことができます。
これは「BIRG効果(間接的な栄光浴)」と呼ばれるもので、これにより自己肯定感や達成感を得ることができます。
例えば「オレたちの○○が優勝した!」とか「今年の優勝は自分も応援してたから価値がある」などです。
進化心理学的視点からも説明することができます。
古代から人間は集団で生きる必要があり、「部族 vs 他部族」の構造が基本でした。現代においてはその「戦う集団への所属感」が、スポーツチームという擬似部族で再現されているわけです。
今回はなぜ人はプロ野球などスポーツの球団やチームのファンになるのかについて見ていきました。
今回もありがとうございました。