みなさん、こんにちは
前回まではファンによる無理やりなポジティブ解釈とその押し付けを見ていきましたが、それをやっているのは地元マスコミもですね。
例えば関西のマスコミは阪神タイガースのことを絶対に批判しません。名古屋のマスコミも中日ドラゴンズが毎年Bクラス(4〜6位)でも監督やチーム、フロントの批判をしません。
このように、地元マスコミが地元のプロ野球球団にポジティブな報道ばかり行い、批判やネガティブな報道を控えています。
その背景にはどのようなことがあるのかについて、今回は見ていきます。
それでは、今回もよろしくお願いします。
今回のサムネ画像は、マスコミ受けしそうなアンパンマン列車と一緒に並んでいるJR四国の高松地区の普通・快速列車です。
経済的利害関係
プロ野球球団とマスコミの間には経済的利害関係があります。つまり、スポンサー・広告収入の問題です。
地元マスコミにとって、地元球団は「お得意様」です。
具体的には、地元マスコミは地元球団とスポンサー契約・広告契約などで経済的に強く結びついていることが多いです。例えばテレビ中継、新聞記事、特集番組、関連イベントなどのメディア収益の柱になっています。これはプロ野球に限らず、例えばサッカーでもバスケットボールでもバレーボールでも同様です。
批判すると都合が悪い
地元マスコミにとって、地元の球団について批判的な報道をすると、「関係悪化=収益減」のリスクがあります。例えばマスコミが批判的な報道を行うと、球団側が協力を拒否したり、広告出稿を減らしたりする恐れがあります。
そのため「波風を立てたくない」という経済的な自己防衛の論理が働いています。
ファンのニーズに応えるため
これはマーケティング的には当たり前のこととも言えます。
地元のファン層は、前向きな情報(希望・期待・擁護)を求めていることが多いです。ネガティブな報道は「裏切り」と受け取られかねません。そうなると視聴率や売上が低下してしまいます。
そのため、報道も「商品」としてポジティブな内容を優先します。
地元との一体化
これは地域活性化とも関わっています。下手をすると行政も関わっています。
特にプロ野球の球団というのは地元の「象徴、誇り」という性質があります。例えば広島カープ、北海道日本ハム、東北楽天などは、地域アイデンティティの核になっていることが多いです。
そのため、マスコミも「自分たちのチーム」という意識を持ち、批判より応援・擁護的なスタンスを取る傾向があります。
地元民の愛着への配慮
上記の「ファンのニーズに応えるため」に似ていますが、地元民の感情への配慮もあって地元球団の批判ができない面もあります。
地元の視聴者や読者は球団を愛しているため、批判報道に強く反発することがあります。例えば関西のマスコミが阪神のことを批判すると、関西の視聴者からクレームが来るのです。その結果、マスコミは読者離れ・視聴率低下を恐れて、迎合的な報道姿勢になるのです。
ただでさえ「若者のニュース離れ」とか、マスコミの偏向報道が問題視されていることもありますからね
アクセス・ジャーナリズムの限界
これはチャネル戦略をイメージしていただけたらと思います。
マスコミは取材ができなければ終わりです。また、特定の選手と仲が良いと独占取材ができることもあります。
そのため、地元マスコミにとっては地元球団への「取材アクセス=チャネル」が生命線となります。
選手インタビュー、記者会見、裏話などは球団の協力がなければ得られませんから、そんな球団や選手に対して批判的な記事を書くと、球団から取材制限をかけられるリスクがあります。
その結果、地元マスコミは「批判的になりすぎると情報がもらえない」という恐怖から、自己検閲的にポジティブ報道を優先するようになります。
構造的な「報道と広報のあいまい化」
これは先ほどの経済的利害関係に近いものですが、実は地元マスコミは地元球団と資本関係にあったりします。
例えば球団の親会社が新聞社やテレビ局を運営している(あるいはその逆)とか、特定局が試合中継の独占権を持っているとかですね。
このような場合、マスコミは「報道機関」であると同時に、球団の広報的役割も果たしているため、批判的な報道が抑制される構造になりやすいです。
マスコミ内部の文化的な要素
これは政治報道でも言えることですが、マスコミ内部でも「批判は空気を壊す」とか「みんな応援してるんだから」などの同調圧力が働いています。結果として、球団、ファン、メディアが一体となった「閉じたポジティブ空間」ができやすく、そこでは批判が受け入れられにくい、という流れになっています。
問題もある
以上のことがマスコミが地元球団のことを批判できない背景です。
しかし、こんなポジティブだけの報道は問題があります。少なくとも政治の報道ではこんなことはしませんよね。
まず、プロ野球に関する公正な報道が果たされていません。球団の問題点(不祥事、コンプラ違反、体制の硬直など)を無視しているわけですからね。結果的に、ファンが「知らされるべきことを知らされない」という状況を生んでいます。
はい、この「知らされるべきこと・・」については次回も出てきます
中立な視点を求めるなら、地元メディアではなく、全国紙や独立系メディア、SNS・個人ブログなどを活用すると、批判的・多角的な視点が得られることもあります。
今回はマスコミが地元チームの御用達になっていることについて述べていきました。
前回のファンによる無理やりなポジティブ解釈もそうでしたが、もしあなたがこういう無理やりなポジティブ解釈やその強要に違和感を覚えているなら、それはあなたが「多様な感情を受け入れる視点」を持っている証拠です。スポーツ観戦には熱さも必要ですが、冷静さや現実感もまた健全なファン心理の一部です。
今回もありがとうございました。