地方公共交通機関のあるべき姿とは①

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みなさん、こんにちは。
今回から数回に渡って、ちょいと真面目な話をしていきます。

僕は「交通系診断士」として鉄道会社やバス会社などの交通系企業の仕事をしたり、事例を集めたりしています。また、それと合わせて沿線地域の活性化の事例も集めています

今回から数回に渡り、僕が集めた事例から地方公共交通機関のあるべき姿を考えてみたいと思います。
それでは、今回もよろしくお願いします。

静岡県の大井川鐵道

自然災害が当たるとまずい

地方の公共交通機関にとって大きな問題となるのが自然災害です。
昔なら自然災害と言えば地震と台風がほとんどでした。台風の場合も沖縄や九州、四国、紀伊半島など、地域もある程度限定されていました。

しかし、今は地球温暖化の影響で夏にはゲリラ豪雨が頻発に発生するようになりました。「線状降水帯」という、ゲリラ豪雨が長時間に渡って降り続ける地域もあります

そのため、今は日本全国どこでも自然災害が起きてもおかしくないようになっています
誤解を恐れず言うなら、毎年夏に自然災害のロシアンルーレットをやっているようなものになりました。毎年どの地区でも「ハズレ=自然災害」を引く可能性があり、もはや人ごとではありません。どの地域も「明日は我が身」です。

そして、地震を含めて自然災害によって被災した場合、問題になってくるのが赤字の鉄道路線です。バスなら都道府県が道路を復旧させるため、復旧次第運行を再開できますが、鉄道は線路が被災すると鉄道会社が復旧させなければなりません。

①JRの場合

黒字路線だとなるべく早く復旧させますが、赤字路線だとほとんどのケースで廃線か、復旧を目指しているけどほぼ進展しない事態(実質廃線)になります

実際、東日本大震災で三陸海岸のJR線の一部は廃線になり、BRTというバスに変わりました。ゲリラ豪雨の被災によってJRの美祢線もBRTに変わります。九州の肥薩線も一部区間は復旧の動きがありません。

気仙沼線BRT

BRTは簡単に言うと、鉄道の線路を剥がしてバス専用道にし、一般道と専用道を走る路線バスのことです。一般道と専用道を柔軟に切り替えられるため、これまでの鉄道だとアクセスが難しかった病院や市役所、ショッピング施設にも柔軟に寄れるようになりました

詳しくはこちらのサイトをご覧ください。

https://www.jreast.co.jp/railway/train/brt/system.html

確かにこのような自然災害が起きると「激甚災害」に指定され、復旧に向けての国からの補助を普段より多くもらうことができます。しかし、復旧する鉄道会社の金銭的負担が0になるわけではありません。いくら国が多く出すと言っても、数億円は鉄道会社が出さないといけません。

JRだとこのへんはシビアです。「赤字だからこれを機に廃線にします」とスパッと決定します
と言っても、すぐに「廃線にします」と沿線地域に発表すると住民から反発されるため、決定はあくまで社内のみの共有にして、沿線地域の住民に対しては「あり方を話し合いましょう」という説明会を開催して、徐々に廃線、バス代行にもっていく流れになっています。

「あり方を・・」と言われたら、ほぼ余命宣告です。JRは「廃線ありきではない」と言いますが、それはあくまで建前であって、本音は廃線ありきです。良くてBRT転換で、基本的にはバス転換です。

地球温暖化は毎年進んでいますし、少子高齢化も加速していますから、自然災害で被災したら廃線にしてバス代行という措置は今後どんどんエスカレートしていくでしょう。

②大手私鉄の場合

大手私鉄とは、関東なら東武・西武や京成、京急、京王、小田急、東急のことです。関西なら近鉄、阪急、阪神、京阪、南海のことです。
また、名古屋の名鉄、福岡の西鉄も大手です。

これらの会社は都市部にあるので利用者が多く、赤字路線は基本的にはありません。東武、名鉄、近鉄だと郊外のほうは赤字路線がありますが、黒字路線で蓄えている潤沢な資金がある上に、それなりに利用者もいるため、赤字路線が自然災害で被災しても廃線にはしにくく、比較的すぐに復旧させます

なので、今回の地方公共交通機関の考察からは除外してもいいと思います。

③中小私鉄の場合

これは①・②で出た鉄道会社以外が該当します。「準大手」の呼ばれるような大規模な鉄道会社もあれば、台風が来たらイチコロというレベルの鉄道会社もあります。

準大手でも例えば神戸電鉄の粟生線のように廃線の危機にある路線もあります。しかし、このような準大手は大手私鉄と同様に黒字路線での蓄えや都道府県からの補助もあるため、自然災害で被災でも復旧の方向で進めます

問題は準大手より規模の小さい中小私鉄です。このような会社は地方(田舎)にあることが基本なので、利用者が少なく、慢性的に赤字になっています。

しかし、中小の鉄道会社は国だけでなく都道府県の補助もあるため、長期間を要するものの、廃線ではなく復旧の方向で進みます
それでも復旧できるまで10年くらいの単位であることも多く、その間にもどんどん人口減少が進み、地域が廃れていきます

また、補助をしてくれる都道府県からは「復旧は今回だけです。次になったら廃線にしてバス代行にします」という意思を感じられるため、次に自然災害で被災したらJRと同様に廃線が進む可能性が高いです

上記の写真にある静岡県の大井川鐵道も台風の被災によって一部区間が長期に渡って不通になっています。県からの補助を受けて復旧をさせることが決まっていますが、次に不通になれば廃線にしてのバス代行だと思います。

資金が豊富で経営体力がある大手のJRでさえ、赤字路線なら自然災害を機に廃線にしています。ましてや資金も経営体力もない中小の鉄道会社が数億円も出して復旧できるわけがありません。それを1回やるだけでも非常に大変なのに、2回できるわけがありません。

廃線になると何が困るのか?

別に赤字で乗る人がいないなら、いっそのこと自然災害を機に廃線にしたら?

そう思うかもしれません。
実際、多くの鉄道会社はそのように考えますし、国や都道府県も同じように考えます。

しかし、そう簡単に済むものではないのです

まず、沿線の街そのものが廃れてしまいます。アクセスできるルートがなくなれば、観光客が来ませんからね。バス代行になったとしても、鉄道よりも輸送力が低いので観光客の人数は減ります。

また、鉄道がなくなれば鉄道の時刻表から沿線の街が消えます。そうなればその沿線地域の街の知名度やブランドも低下します
バス代行も、鉄道が廃止されて数年で廃止になって地域がさらに廃れます。

診断士の2次試験でもお馴染みの「地域活性化」の対義語は、「地域失活化」です。廃線になると沿線の街はこうなってしまいます

今回はここまでにします。

次回も地方公共交通機関のことについて考えていきます。
今回もありがとうございました。