みなさん、こんにちは。
今回も前回の続きとして、こち亀の新シリーズが流行するかどうかについて見ていきます。
それでは、今回もよろしくお願いします。
「1クール」では、慣れる前に終わってしまう
僕は、もしこち亀の新シリーズが短期間の放送で終わるのであれば、かなり厳しいと予想しています。
例えば1クール、12~13話程度だったとします。
最初の数話は「両津の声が違うな」「麗子の声も違うな」「キャラクターデザインも昔と違うな」という違和感を持つ人が出てくるでしょう。
でも、これは必ずしも悪いことではありません。
人間は慣れます。
10話、20話、50話……と見続けていけば、「新しい両津も悪くないな」「この声も両津として定着してきたな」となる可能性があります。
おそらく、実際の放送よりかなり前(今年の9月)の段階で新声優を発表したのも、慣れるまでの時間を確保するためでしょう。
ただ、それでも「慣れるまでの時間」が十分に与えられるのかは問題です。
せっかく新しいブランドを作ろうとしているのに、視聴者が新しい声や演出に慣れてきたところで終了してしまったら、旧作のブランドを超えるところまで到達できません。
むしろ、「やっぱりこち亀といえばラサール石井だよね」と、旧作の存在を再認識させる結果になる可能性すらあります。
ドラえもんが参考になる
声優の交代で非常に分かりやすい成功例が『ドラえもん』です。
ドラえもんも2005年に大山のぶ代さんなどの体制から大規模な声優交代がありました。
当然、当初は「声が違う」という違和感がありました。クレヨンしんちゃんの声優のように似ている声優に交代したのではなく、話し方や口調と言うか、声のテイストから何もかも違っていました。
しかし、その後も新しい声優陣による放送が継続しています。
結果として、現在の子どもたちにとっては、「ドラえもん=水田わさびさん」という新しい認識が形成されています。
つまり、旧声優のブランドを一気に消したのではありません。長期間にわたって新しいブランドに触れ続けてもらうことで、少しずつ認識を更新していった。ここが重要なのだと思います。

サザエさん、クレヨンしんちゃん、ちびまる子ちゃんなども同じです。
長寿番組では、声優の死去、引退、病気による降板などで声優の交代が何度か起こっています。
例えばクレヨンしんちゃんでは、長年しんのすけ役を務めた矢島晶子さんから小林由美子さんへ交代しています。
最初はどうしても「前の声と違う」と感じます。
しかし、新しい声優が何年も何年も演じ続けることで、次第にそれが「普通」になっていきます。
そして、子どもたちにとっては、その新しい声が「自分たちの世代のしんちゃん」になる。
これがブランドの世代交代なのではないでしょうか。
1クールじゃ無理
新しいキャラクターデザイン、新しい声優、新しい演出などによって、若い世代に「新しいこち亀」として届けることには意味があります。
ただし、ここでも「馴染むまで時間がかかる」という問題があります。
これは1クールでできることではありません。
だから、新規顧客を獲得するという意味でも、長期間の放送が重要になると思います。
実はこれをうまく成功させたのが、「ダイの大冒険」です。ダイの大冒険は、90年代に一度アニメ化がされました。その際は物語の途中で終了してしまいました。
そして、数年前にリメイク版が放送されました。しかし、1クールで終わらせるのではなく、連続で100話を放送させ、物語の最後まで一気に放送しました。
最後のほうには旧作のファンはもちろん、新作を見た若い世代からも賞賛の嵐となりました。
ダイの大冒険は、新しいシリーズへのリメイクによってうまくブランドを構築することができた例となっています。

「単発のヒット」と「ブランドの再構築」は違う
これはスラムダンクからも学べます。
『THE FIRST SLAM DUNK』は、映画としては大成功でした。
しかし、それは「新しいスラムダンクのテレビシリーズが、旧アニメを完全に置き換えた」ということとは違います。
映画には映画の楽しみ方があります。約2時間の作品として完成度を高め、大きな話題を作ることができます。
一方、テレビシリーズは毎週見ることで、キャラクターや声、演出などに少しずつ慣れていきます。
つまり、映画は「短期間で大きな話題を作る」のに向いている一方で、テレビシリーズは「長期間かけて習慣とブランドを作る」のに向いている。
この違いがあります。
ここを混同してはいけないと思います。

長年かけて作られたブランドは、長年かけて作られた記憶だからです。
だからこそ、ブランドを変えるときには、「新しいものを作ること」だけではなく、「新しいものを定着させる時間」を考える必要があります。
これは、今回の新こち亀にも当てはまるのではないでしょうか。ブランドは一気に作るものではなく、時間をかけて「慣れてもらう」ことで作られるものです。

今回はこち亀の新シリーズが流行するかどうかについて見ていきました。
こち亀の新シリーズが旧作の壁を越えられるのか。中小企業診断士としては、作品の面白さだけではなく、「ブランドの世代交代」という視点でも注目してみたいと思います。
今回もありがとうございました。