みなさん、こんにちは。
今回も大企業を中心としたリーダー企業、独占企業、半官半民企業の「驕り」とも言えるものを見ていきます。
ここまで見てきたように、リーダー企業、独占状態の企業、半官半民の企業には、驕りがあります。つまり、これらの企業には「嫌なら使うな」とか「何だかんだ文句言っていてもお前らはどうせ使うんだろ?」と利用者をナメているような驕りがあります。
実は、これは競争環境・顧客行動・組織心理が生む「合理的に見える慢心」なのです。
それでは、今回もよろしくお願いします。
市場支配力と価格決定力
まずベースにあるのはこれです。企業経営理論でやりましたよね。独占企業ならば経済学も関係してきます。
リーダー企業や独占企業は市場支配力があります。また、半官半民の企業は安定感や昔からのブランドもあるので、やはり市場支配力があります。
そういう企業だと、代替品が少ない、ブランド・規格・インフラで囲い込んでいる、スイッチングコストが高いことになります。
そうすると、「価格を上げても需要は大きく落ちない=需要の価格弾力性が低い」状態になります。
経済学でやりましたよね。グラフの傾きが急になるもので、多少の価格変動では客数はほとんど変わりません。
そのため、「値上げしても利益は上がる。だから値上げは合理的判断」と考えます。
これは「驕り」ではなく、経営学や経済学の教科書どおりの行動と言えます。
スイッチングコストと移動障壁
先ほど、「スイッチングコストが高い」と述べました。
スイッチングコストとは、顧客が現在利用している製品やサービスから、別の製品やサービスに乗り換える際に発生する、金銭的・物理的・心理的なコストや手間、障壁のことです。このコストが高いほど顧客は今のサービスに留まりやすく、マーケティング戦略では自社顧客の囲い込みや新規顧客獲得のために、このコストを意識して設定されます。
スイッチングコストの例としては、使い慣れたもの、データ移行の手間が面倒なもの、契約・解約が面倒なもの、周囲の人が同じ会社を利用しているもの(ネットワーク効果)があります。
スイッチングコストは移動障壁の形でも表れます。企業経営理論で言うと事業戦略(競争戦略)に該当する内容ですね。
そしてこのスイッチングコストや移動障壁の高さが、「顧客は文句を言うけど離れない」の正体とも言えます。
人間には現状維持バイアスがあります。
今まで使っていたものから切り替えるのはかなりの心理的ハードルがあります。特に長期継続顧客になっている企業のものほど離れられなくなっています。
経営学ではこれを「ロックイン効果」とか「顧客の惰性」と呼びます。
そして、リーダー企業や独占企業、半官半民の企業はこれを逆手に取っているというわけです。
現状維持バイアスやスイッチングコストが強いと、移動障壁が高くなるため、顧客は「不満はあるけど、乗り換えるほどじゃない」と考えます。
そういう顧客が多く、企業側はデータでそれを確認できるので、「多少文句は出るが、顧客は離れない」という成功体験が蓄積されていきます。
成功の罠
ここからは「驕り」に見えるものです。
今、「成功体験が蓄積されていきます」と述べましたが、これはイヤホンなしで動画の音声を流す、電車の中で大声で騒ぐなどのマナー違反をしている人が「周りから怒られなかったからやってもいい」と誤学習をすることと同じようなものです。
つまり、リーダー企業や独占企業、半官半民の企業は「不便になって文句を言われても顧客は離れない」という悪い意味での成功体験を蓄積しているために、顧客への不便がどんどんエスカレートしていき、顧客満足の「質的劣化」が見えなくなっていきます。
マクドナルドの例なら値上げやストローの廃止、JRの例なら終電繰り上げや昼間の運休、Docomoならアンテナの不整備が、「不便がエスカレートしていく」の例です。これらは毎年のように「改悪」され、顧客に不便を強いています。
確かに、不便にすればコストが減る(値上げで収益単価が上がる)ので、利益は増えます。
しかし、これを続けていると顧客満足度やロイヤルティはどんどん低下・劣化していきます。
その一方で企業は、「値上げしてコストを下げても顧客は文句を言うけど利益は増えた。それならこれが正しいのだから、次もまたやって大丈夫だ」という自己正当化ループに入ります。
その結果、毎年のように値上げ、不便の強制を繰り返すのです。

組織の内側で起きている心理メカニズム
これは大企業ほど起きやすいまのです。
顧客からの不満は「ノイズ」として現場で処理される一方で利益は増えているので、経営層は「一部がうるさいだけ、クレームを言っている顧客は声が大きいだけの少数派」と認識し、顧客かの不満を軽視します。これは集団浅慮の典型です。

なぜ驕りに見えてしまうのか
ここまでの内容をまとめると、値上げしても数字は落ちない、顧客は文句を言うが行動しない、企業内部では成功体験だけが強化されるということでした。
この結果、「顧客は離れない。市場は自分たちのもの」という無意識の前提が組織文化になります。
これが外の顧客から見ると、「どうせ文句を言っても買うんだろ?」という驕りの態度に見えるわけです。
経営学的に見ると「危険な状態」
重要なのはここです。この驕りのように見える態度は、短期的には合理的ですが、中長期的には非常に危険です。
理由は、①破壊的イノベーションは「不満層」から始まるから、②技術革新や規制変更でスイッチングコストが一気に下がるから、③一度離反が始まると崩壊は指数関数的に増えるからです。
顧客生涯価値(LTV)も中長期的な視点のものですよね。これが崩れると中長期的には影響が大きなものになります。
今回は、リーダー企業などがもっている驕りについて詳しく見ていきました。
今回もありがとうございました。